栄養薬理
食品成分の体内での作用経路
栄養薬理は、食品成分が体内でどのような経路を通じて作用するのかを扱います。「効果がある」と「どのように作用する」は別の問いであり、後者に答えてはじめて結果が説明力をもちます。
扱う問題
吸収と変換
摂取した成分がそのまま吸収されるのか、腸内細菌や酵素によって別の形へ変換されるのか。ジンセノサイドが代表的な例です。
分布と代謝
吸収された成分の血中濃度の推移、代謝産物、排泄経路。
作用経路
ホルモン、自律神経、炎症性メディエーターなど、どの経路を経て最終指標に影響するのか。
用量反応
摂取量と反応の関係。機能性の認定における推奨摂取量の根拠となります。
媒介経路の検定 — 方法論
研究所がヒトのデータにおいて経路仮説を扱う方法は次のとおりです。
経路仮説の事前設定
先行資料と機序研究に基づき、どの変数が媒介するのかを試験前に明示します。データを見た後で探すことはありません。
媒介変数の測定計画
媒介候補となる変数を、結果変数と同じ時点で測定できるよう来院日程を設計します。
経路モデルの設定
直接効果と間接効果を分離できるモデルを事前に定義し、統計解析計画に含めます。
検定と解釈
経路係数の有意性とともにモデルの適合度を報告します。有意でない経路もそのまま報告します。
この方法は、研究責任者の先行研究において実際に用いられました。発酵紅参の糖代謝改善研究では多群経路分析によりホルモン相互作用の仮説を検定し(Lee et al., 2013)、遊離脂肪酸の調節研究ではホルモンと自律神経系の媒介を扱いました(Lee & Ji, 2014a)。抑うつ指標の研究では脂質が媒介変数として解析されました(Lee & Ji, 2014b)。
in vitro・動物データとの接続
細胞や動物で確認された機序が、ヒトでも同じように働く保証はありません。用量、曝露の形、代謝経路が異なるためです。研究所は2つの層を接続する際に、以下を確認します。
- in vitroで用いられた濃度が、ヒトで到達可能な血中濃度の範囲かどうか
- 動物に投与された用量が、ヒト換算で現実的な摂取量かどうか
- 動物で活性を示した形が、ヒトでも同じ形で存在するかどうか(変換・代謝を考慮)
- 機序から予測されるヒトの指標が、実際に測定可能な変数かどうか
この確認を経ずに動物データをヒトの結果の根拠として提示すると、論文の査読でも認定審査でも指摘事項となります。ご相談の段階で、この接続の可能性をまず検討します。
参考文献
- Lee, K. J., Lee, S. Y., & Ji, G. E. (2013). Diabetes-ameliorating effects of fermented red ginseng and causal effects on hormonal interactions: Testing the hypothesis by multiple group path analysis. Journal of Medicinal Food, 16(5), 383–395. https://doi.org/10.1089/jmf.2012.2583
- Lee, K. J., & Ji, G. E. (2014a). Free-fatty-acid-regulating effects of fermented red ginseng are mediated by hormones and by the autonomic nervous system. Journal of Ginseng Research, 38(2), 97–105. https://doi.org/10.1016/j.jgr.2013.12.003
- Lee, K. J., & Ji, G. E. (2014b). The effect of fermented red ginseng on depression is mediated by lipids. Nutritional Neuroscience, 17(1), 7–15. https://doi.org/10.1179/1476830513Y.0000000059